間伐ネット事務局は8日、福島県いわき市で高級割り箸の製造・販売を手掛ける株式会社磐城高箸(高橋正行社長)を訪れた。
同社は茨城県境にほど近い川部町に位置し、間伐された磐城杉を用いた割り箸の製造、販売を事業としている。繁忙期にも関わらず、作業工程をひとつひとつ丁寧にご説明いただき、割り箸づくりの思いや新たな商品展開などお話をお聞かせいただけた。本記では、その取組をご紹介したい。
一つ一つ人の手の入った作業工程~日本一の割り箸~
高橋社長は神奈川県横須賀市出身。祖父が経営していた林業関係の会社に関わったことをきっかけにいわき市に移住。同社を設立した。同社の割り箸で使われている磐城杉は下草刈りがしっかりされた森で育った間伐材を活用。皮むき→53cmほどにカット(割り箸9寸2本分の長さ)→ショートケーキ状に割り、帯鋸で板状にする→1週間の予備乾燥→3日間の本乾燥→小板作業→割レ目作業→仕上げ・検品→焼印→梱包という過程を経て割り箸となる。
工程ごとに木目を確認し、割レ目作業を行う際も、平行な木目部分が接着部となるようにしている。さらに1膳1膳、強度検査も実施している。「ここまでやっているのはうちぐらい」と日本一品質に自信を述べる高橋社長。選別においいても地域の障害者施設と協力しながら選別を行う。同社の割り箸の特長はこれだけではない。本乾燥で活用されている薪ボイラーには、割り箸としての活用が難しい材や端材、不良品が熱源として使われている。乾燥庫は人の縁があって生まれたものだ。木の香りが逃げない温度で乾燥され、木の含水率は3%程度まで下げる。その技術は「大学教授など研究者も見学に来るほど」とのこと。
さらに、最後の焼印作業にもこだわっている。この作業も手作業。割り箸のイメージを左右する肝となるところ。印の製作においては30社との交渉の末、現在に至っている。
転機は間伐コンクール受賞~そしてふくしま産業賞受賞~
東日本震災後に開催された2011年間伐・間伐材利用コンクールにおいて、いわき市と宮城県栗原市、岩手県陸前高田市被災3県の杉を使った3膳セット「希望のかけ箸」が間伐推進中央協議会長賞を受賞した。「この受賞が大きかった」と高橋社長。
その後、グットデザイン賞、本年新設されたウッドデザイン賞、さらに福島民報社が行う、福島県の活力を高めるための「第1回ふくしま経済・産業・ものづくり賞」金賞(福島民報社奨励賞)の受賞へと繋がっていった。
だが、事業は決して安泰ではない。現在の活用の多くは、ノベルティー活用。目指すは月50,000膳の注文。今後も多くの人に知ってもらい、活用してもらうために、同社の割り箸づくりの挑戦はつづく。
割り箸作づくりから枕づくりへ~新たなオールいわきブランド~
新たな挑戦として、地域の企業や団体と協力し磐城杉を活用した枕「眠り杉枕」を開発した。割り箸づくり工程で不良品となった材をサイコロ状のチップに加工し使われている。
磐城杉は人をリラックスさせるセドロールが多く含まれ、やわらかく、吸湿もよい。枕用にはうってつけの素材。この眠り杉枕は昨年末、地元の信用組合から相談をうけ、クラウドファンディング「FAAVO×磐城国」1号案件として開始された。
メンバーにはエコロジーオンラインでもご紹介した「いわきオーガニックコットンプロジェクト」の吉田代表も参加されている。新しく生まれたオールいわきの新商品。今後も応援をしていきたい。
今回、訪問した磐城高箸さん、カーボン・オフセットで協働した今野商店さんなど、被災した地域の企業は必死に前を向いて進んでいる。被災した現実を乗り越え、新しい商品を生むことにつなげているのだ。
私自身、福島県いわき市出身である。地元いわき、福島、東北の復興のために今後も応援していきたい。
エコロジーオンライン事務局 / 大和田正勝
株式会社磐城高箸ホームページ
http://iwaki-takahashi.biz/index.html
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